とある神社での事。

「すみませーん、御朱印を頂けませんか。それと・・・」

「はい。それでは、少しお待ちになってくださいね」

バタバタ・・新米の巫女が、宮司の部屋の前にやって来ました。

巫女

失礼します。宮司さん、御朱印をおねがいします。

宮司

はいはい。

巫女

それと今・・どうすればご利益が沢山戴けるのか尋ねられたんですが・・・

宮司

ん〜、ご利益沢山かぁ、そうだなぁ〜、教えてあげるから、自分なりの言葉で話してみてごらん。

巫女

はぁ・・

巫女さんは、とても不安げです。

宮司

あなたは、お陰と言う言葉を聞いた事があるかな?

巫女

はい。よくは分からないですけれど、以前お参りの方がそんな事を・・・。

宮司

そうか、

宮司さんは『お陰』という言葉の事について話し始めました。

宮司

お陰と言うのは、簡単に言ってしまえば何かのお陰様でと言う意味なんだ。

例えば、この土地みんなが生活しとるこの大地は、自然からお借りしているんだ。
それぞれの家や仕事場がある土地も当然、自然からの恵みの一つなんだよ。

それに、毎日吸っとるこの空気や、飲むもの食べるもの全て、元は自然が生み出しているのは分かるよなぁ。

巫女

はい。あんまり意識したことは無かったですけど。

宮司

もしも、明日から太陽が昇らんようになったら、また雨が全然降らんようになったら、世の中どうなると思う?

人の力の及ばん、色んなことが自然頼み、神頼みとなると思わんかね?

巫女

自然の恵みのお陰で私たちは・・確かにそうかもしれませんけど、それが『お陰』と言うことなんですか?
それがご利益とどう関係するのか、さっぱり・・・??

宮司

それだけじゃあ無い。

続いて宮司さんは『祖先』との事について話し始めました。

宮司

私たちが生活するそれぞれの地域は、祖先が代々に亘って切り開いてきたんだ。
それぞれの祖先の努力によってこの国の繁栄に繋がったんだよ。

巫女

祖先と言っても祖父ぐらいまでしか、わからないですね。

宮司

確かに祖父母までならわかるけど、遠い遠い祖先の事など考えたことがないだろうな。でもね、遠い遠い祖先がいたからこそ今の自分がある事を忘れないように。

巫女

そんなこと考えたことがなかったです。

宮司

祖先の恩を感謝しないといけないよ。そして祖先は自然の恵みや、すべての物に感謝し、すべての物に神が宿るという事を思って拝むようになったんだ。

巫女

昔の人はいろんなものに対して拝んでいたんですね。

宮司

昔は宗教というよりも感謝の誠を捧げるために拝んでいたんだよ。感謝の誠を捧げるのが、おかげ参りということになるんだ。そして、またおかげを頂きに神社に行ってお願い事をしておかげを頂く、願いが叶えればおかげ参りをする、それが日本の心だと思うんだ。

巫女

私はお願いばかりして、願いが叶ったときは何もしていなかったです。

宮司

日々の感謝を捧げるところが、「氏神さま」なんだ。「氏神さま」は自分たちの住んでいる地域をお守りしている神社で、そして「お伊勢さま」は日本をお守りくださる尊い神さまだという事を覚えていて欲しいんだ。

巫女さんは「お伊勢さま」のことを興味深く聞き始めました。

巫女

伊勢の神宮は日本を守っているんですか。

宮司

そうなんだ。こんな神さまは世界の国々を探してもないと思うんだ。だから日本は素晴らしい国だと誇れるのではないだろうか。

巫女

宮司さん、日本って本当にいい国ですね。

宮司

いい国だろう。だから「氏神さま」のご祭神の宿るお札と、伊勢神宮の神さまである天照大御神のおちからを宿し、私たちにより大きな恵みを与えてくださるお札「神宮大麻」をお祀りすることが大事だという事がわかるかな。

巫女

これからお参りする方や御朱印を受けられる方に、氏神さまのお札と神宮大麻が重要だという事をお話しさせていただきます。

最後に宮司さんは神職としての本音を語りました。

宮司

全国に鎮まる神社の中で、皇室の御祖神をおまつりする伊勢の神宮は、我が国の総氏神的な存在として時代を超えて人びとの崇敬を受けてきました。神さまを敬う心は、伊勢の神宮をはじめ地域の神社を中心に、親から子へ、子から孫へと、伝え繋がれる中で培われてきました。

「氏神さま」のお札と「お伊勢さま」のお札をお祀りすることは、「日本人の心」を継承するということです。これが岡山県の神職の本音です。

神社においては、皆が常に幸せであるように、また、将来に亘ってその幸せが続くようにと、それぞれの神職が氏子崇敬者と共に各神社をお護りし、祭祀を行い、日々祈りを捧げています。

お祀りする人と神前との心を繋げるものがお札です。広く世の中の人々が幸せの内に日々を過ごせるよう願い、我々の先人祖先たちが、守りつないできた信仰や伝統文化を次代に繋げるためにも、各ご家庭にて神棚の中心的なご存在となる「氏神さまのお札」と「お伊勢さまのお札(神宮大麻)」をお祀り下さいます様お願い申し上げます。